あさイチプレミアムトークに狂言師の野村萬斎さんが出演。多彩な活動に小さい頃からのお話、息子さん初舞台での涙や自在に操れる身体、三谷幸喜さんや息子さんのコメントなど見応えたっぷりでしたが中でもお父様の野村万作さんのコメントが一番心に残ったので書き起こし。
Q:「息子はライバル」と言う言葉の真意とは?
野村万作
萬斎ファンの観客は多分、新しいことを通して「あーこの人は狂言やってる人か」と「それでは狂言を見てみよう」と。ある意味観客としては僕に言わせると「甘いファン」。ファンだから甘い。ちょっと面白ければ喜ぶ。そういう観客ばかりではない芸の厳しさというものがあるわけですね。我々にはいつも。
名前でもって光輝いてるだけではなくてその時の芸で掴み取ってくる。観客の興味をぐっと引っ張ってくる。ライバルって単に競い合っているのではないんですよ。僕も僕なりに歳をとって老練ですからね、彼以上に掴み込んでやろう。つまりご馳走は僕が提供しようと。レストランの入り口までは万斎さんに連れてきてもらって、その中身のご馳走のおいしさは僕が提供しようと。ちょっと苦々しいかもしれませんけど倅にとってはね。そのくらいの気持ちでいます。
この言葉に萬斎さんはまず興味を持って来てもらって年齢毎の芸を見てほしいと語ってました。世阿弥『風姿花伝』の時分の花、まことの花、みたいな事でしょうか。
しかし万作さん、老いや不確かな人気に左右される芸能の難しさを乗り越えた圧倒的な芸への自信と狂言への愛、人を楽しませる事への貪欲さ、意識の高さに裏打ちされた言葉で流石というかすごいとしか言いようがないですね。万作さんなんと86歳!姿勢や発声の美しさすごい。
私萬斎さんが英国留学から帰国したあたりよく観に行ってて、まさにふわふわのミーハー全開の万作さん言うところの「甘いファン」だったわけですが、そんな私にも万作さんの芸の凄さはわかりました。客を引っ張る引力みたいなものにぐいぐい持っていかれる体験したい方は是非観に行ってみて下さい!